北里病院・さっぱりわからん!検査編

4-20 ある症例

最後に。

この「瞳孔反応検査」の意味するところを知った後、それが意外なところともつながっていたことを知り、驚いたことが一つある。

『とにかくむかむかするんです。吐き気というんじゃなくて、胃の上がむかむかする。』

頭の中がしびれてきて「膜がかかる」という表現が近いです。白いベールがかかってるみたいでした。何かを考えようとしても、思考がまとまりません。(-中略-)

筋肉の力は少しずづ抜けていくようでした。でも立っていられないというほどではなかった。頭の中の空白がどんどん広がっていくように感じられました。(-中略-)

電話をかけ終えた直後に、ちょっと重い空気を吸い込んだような気がしたんです。それでごほごほと咳込んでしまって。(-中略-)
そこからもう、体がうまく動かなくなってしまいました。(-中略-)

でもそこのベンチで休んでいるうちに、ますますひどくなってきました。もう息ができなくなっちゃった。(-中略-)その後まったく動けないようになってしまいました。(-中略-)

外に出ると、地面にビニールシートを敷いて、その上に電車のシートごと置いてくれました。(-中略-)でもとにかく、ものすごく寒かかったんです。異常に寒かった。手足の先からどんどん寒気がきます。「寒い!」って言ったらどんどん毛布をかけてくれた。(-中略-)

それから時間がどれくらい経過したのかもわかりません。腕時計を見るために腕を上げることもできないのです。(-中略-)

恐怖というか、「これからどうなるんだろう?」というようなことを、まったく感じなかったといえば嘘になります。でもどちらかというと、混乱してわけがわからなかったというほうが大きかった。命の危険までは考えなかったですね。というよりも、ほんとうに頭の中にはぼんやりともやがかかっていて、そこまでは考えずにすんだという方が近いですね』

もし、化学物質過敏症患者がこれを読んだだとしたら、これは「自分の症状のことだ」と思うだろう。自分が化学物質に曝露して症状が出て倒れるときと、まるで同じだ、と。

実は私もそう思った。「これって、私が農薬発作を起こして倒れるときと、まるきり同じじゃん!」と。

しかしこの”症例”の人は、実は化学物質過敏症ではないのだ。

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