この発作、始まりと同時に終わりも唐突にやってくる。
パッと、まるで縛られていた縄が解けたように、手足が動くようになる。身体も動き、頭も働く。あの巨大なまな板も、どこかへ消えてしまっていた。
それで時計を見ると、2時間から4時間が経過しているのだからぶったまげる。私の感覚ではせいぜい、40分くらいの感じだったのに。
見ると、窓の外はもうすっかり薄暗く、夕方になりかかっていた。発作が起きたのは、午後の2時頃だったのだ。まるでタイムワープしたかのよう。時間の感覚まで、完全におかしくなっているのだった。
後で知ったことだが、この発作はどうも「意識障害」というものらしかった。意識が、何らかのことで変調を来し、混濁したり昏睡したりする。原因はさまざまで一口にはいえないが、その約2割強は、脳からくる。脳の血管障害や、脳の神経伝達が何かしらのことで阻害されたりすると、これが起きるのだ。脳の神経細胞は「電気インパルス」によって信号が伝わるので、私が電池切れのロボットと思ったのも、あながち的外れではないのかもしれない。また「巨大なまな板」と私は表現したのだが、上から押されるような、途轍もなく重いものが自分の上に乗っかっているように感じるこの“重量感”。これを訴えるCS患者は実はけっこう多くいる。
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