仕掛けられたうつ(chaptor3)

8-7 梁瀬義亮医師の話

パラチオンという農薬で、一年に200から900人もの人が、自ら死を選んで自殺した。昭和30年代とはいえ、これは尋常な数ではないし、尋常な事態でもない。

しかもこれらの自殺について、奈良県五条市で開業していた梁瀬義亮医師は、話を聞きに来た『複合汚染』の著者有吉佐和子に、こう言うのだ。

それはホリドール飲んで自殺した数でしょう

そうです

実際はその十倍も多いですよ。
自殺として届けていない家がほとんどですからね。
世間体もありますし。
第一、ホリドールで生きるのが嫌になって首吊った人は、
ホリドール自殺の統計に入っていないですし、
これは農村以外にも大勢いる筈です。(同P292~293)

つまり、パラチオン(ホリドール)を使って-飲んだりとして-自殺した人が年間200から900人近くに上り、それ以外にこの農薬を日々農作業で扱ったり吸い込んだりとしてうつとなり、別の手段でもって自殺した人は、その10倍はいる、と梁瀬義亮医師は言うのである。ということは、年間2,000から9,000人近く・・・ということになるのか。

なぜそうなるのか。

理由は二つある。第一は農村医学者からの報告だが、農薬を多用すると、最初に神経系統に影響が現れ、情緒不安定、不眠症という微症状が出て、次第々々に自殺願望が強くなるというのである

同P221

また梁瀬義亮医師も

ノイローゼですね、胃病も。
精神が冒されると、まず胃にきます。
理由が、どうしても分かりませんでした。
私は患者の食生活の指導をさせてもらいまして、
麦飯と野菜を沢山食べるように言うてましたが、
魚も肉も滅多に食べん人たちが、
どんどんおかしくなるんです

あのォ、おかしいというのは、たとえば

まず無気力になり、生きるのが嫌になってしまうのです

あぁ、農薬に自殺願望を強める傾向があるというのは、そのことですね

はい、随分、死にました。
このあたりででも一家全滅した例が幾つもありますから、
全国的には大変な数になるでしょう(同P292~293)

 

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