奥野井 タリカ

仕掛けられたうつ(chaptor1)

6-4 アパートでひとりもんモンもん

うつが始まったのは、かなり以前からだった。化学物質への過敏症状が出てくるより、数年早かったように思う。 始まったのは、学生の頃一人暮らしをしていた、例のあの世田谷アパートからだ。住み始めて2年目の、春、5月頃から。 今でもよく覚えているのは...
仕掛けられたうつ(chaptor1)

6-3 うつと空気

そうして休憩のために立ち寄ったのが、この雪ノ原だった。実際は牧場で、牧草地にも実は除草剤を使うそうなのだが、このときは地表が雪に覆われていたから、それも出てこなかった。 素晴らしい空気だった。吸っても吸っても、喉にも肺にもどこにも引っかかる...
仕掛けられたうつ(chaptor1)

6-2 うつが消えた?

でもそんな私は、いつの頃からかまったく、表に出てこなくなっていた。 代わっていつも表に出ていたのは、イライラとしてつねに神経を逆立てている私。何だかよくわからない焦燥感に駆られている私。ささいな相手の言動に傷付き、それについていつまでもぐる...
仕掛けられたうつ(chaptor1)

6-1 雪の野原

私のうつは、化学物質過敏症以前から始まっていた。気分が重く、だるく、人に会いたくない。外にも出たくなかった。そしてときに、激しい自殺願望がつのる。でも不思議なのだった。なぜこんなにうつになるのか、その原因が何も見当たらないのだ。 見渡す限り...
北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-32 それしか方法はない。

奥野井さん、来てました、手紙 そう言って私に示し、また文面に目を戻した。そして読み終えると、 奥野井さん。N県へ行きなさい 「行ったらどうですか」でもなく、「行った方がいいですよ」でもなかった。「行きなさい」だった。 手紙の末尾に私は、つけ...