奥野井 タリカ

世界の縁に立つ

世界の縁に立つ-私の化学物質過敏症 その10

絶海の孤島に一人流されたと思っていたのに、何やらこのところ、こちら側にやって来る人がやけに多い。あちらの「世界」や「社会」から、ぽろぽろと転がり落ちてきた人が、ほうほうの呈でこの島に、「こちら側」にやってくる。それは、CSばかりではなかった...
世界の縁に立つ

世界の縁に立つ-私の化学物質過敏症 その9

私は、遠い向こう岸に見える街を、じっと眺めている。時間は夕暮れどきで、遠くに見えるその街には、ぽつぽつと灯りがともり始めている。きれいで、華やかで、そして賑やかなその灯り。その下にはたぶん、人が大勢いて、それぞれが活動して、活気に満ちている...
世界の縁に立つ

世界の縁に立つ-私の化学物質過敏症 その8

発症してまだ日も浅い、あるとき。急に一瞬にして、と思った、というか理解したことがある。完全にばっきりわかれたな・・・この「わかれた」は、「分かれた」であり、また「別れた」でもある。つまり自分のいるところと、友人知人、親類縁者一同のいるところ...
世界の縁に立つ

世界の縁に立つ-私の化学物質過敏症 その7

それからの約3年間は、見ようによっては実にハランバンジョーな日々になった。引っ越しに次ぐ引っ越し、家移りに次ぐ家移りの連続である。住まいを転々と変えたこと、実に7回。そのうちの3回は、家族ごとの大々的な引っ越しになった。これはCS患者にはさ...
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世界の縁に立つ-私の化学物質過敏症 その6

とにかく開けた窓を閉め、這いつくばって部屋の外へ逃げた。居間の方では両親がまだ起きていて、テレビを観ていた。た、たすけてー・・・そう言おうとしたが、言えなかった。しゃべれないのだ。なぜか口から声が1つも出てない。と同時に「助けて」という単語...