仕掛けられたうつ(chaptor2)

7-17 突破口

注意! 本章には、かなり強いうつ、自殺衝動の描写があります。フラッシュバックやPTSD等を懸念される方は、どうぞ体調を優先なさってくださいますようお願い申し上げます。

ある日、母と珍しく口論になった。

その頃私の体調は、相当にひどい状態になっていた。過敏症状の他に、謎の「発作」まで起きるようになっていた。突然身体がずしりと重くなり、何をどうやっても身体が動かない、という状態が2~3時間続く。いよいよヤバくなってきた。この、目の前にごみ焼却施設のある家に住んでたら、マジで廃人になるわ…と思った。それでとにかく母に、
やっぱどっかに移んなきゃ駄目だ!!

とえんえんとぐるぐると訴えていたんである。ただ私はうつ状態だと、物言いがかなりしつこく長々しくなる。母も疲れていた。また少々うんざりもしていたんだろう、私が幾ら言っても、首を縦には振らない。そして言った。

「だってあなた、うつじゃない」

私は一瞬、うっとなった。たしかに私はうつだ。でもうつだといって、どうしてここの環境の悪さ、空気のひどさ−それを私は毎日体で感じている-を否定することにつながるのか。こんなに私はひどい状態になっているのに、なぜそれを「うつ」一つで片付けてしまおうとするのか。

「たしかに、たしかに今私はうつだけど、でもこれは私のうつじゃない。化学物質のせいだ、化学物質のせいでうつになっている!Sさんもそうなるって言っていた!!」

必死になってそう言った。言ってるうちに涙が出てきた。悔しかったのだ。自分の母親にさえ誤解され、「あなたうつじゃない」と突き放されるように言われたことが。猛烈に悔しかったのだ。

「うつだから、化学物質にも過敏になっている」-両親はそう考えていた。

そうではない。逆なのだ。

「化学物質への過敏症状が出ているから、うつにもなっている」のである。いわば化学物質過敏が主症状で、うつはそれによる副症状であるといえる。

そう訴えると驚くことに母は、
「あ、わかった。それはそうかもしれない」

と突然納得した。これには私も驚いた。え、それで納得しちゃえるんですか?

後で聞いたところによると、母はこのときはまだ半信半疑だったという。しかし私が猛然と、全身の毛を逆立てるように真剣にこれを言ってきたので、
とにかく彼女の言うことは全部、すべて信じてみよう…

そこから始めなければ駄目だ、と思ったのだという。そして、この母の「一応の納得」から少しずつ事態は良い方向へ、打開の方向へとようやく動き出したのだった。

© SORAIRO

「化学物質でうつになる」

この一言を、この事実を知った意味ははかり知れない程大きかった。この正しい情報が、真実本当の医学的な情報-たとえエビデンスが弱くとも、これは多くのCS患者が体験したことによる一つの法則だ-がもし私にもたらされなかったら、私はM市のこの家から遂に脱出出来なかったかもしれない。両親はずっと、誤解したままであったかもしれない。

たった一言の、まぎれもない真実で、私は文字通り命拾いし、救われたのだ。

コメント

  1. ちぇろちづ より:

    タリカさん、3月に入ってから雪が多くびっくりですが、お元気でお過ごしでしょうか。なかなかコメントできませんが、いつも楽しみに拝見してます。
    家族の無理解、どちらもつらいですよね。お母さまとの理解に近づけてよかったよかった。今回、イラストもハッとするくらい素敵で、うるっときちゃいましたよ。体調に気を付けてゆっくりブログ続けてくださいね。

 
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