仕掛けられたうつ(chaptor2)

7-13 心理ストレスばかりがうつじゃない

注意! 本章には、かなり強いうつ、自殺衝動の描写があります。フラッシュバックやPTSD等を懸念される方は、どうぞ体調を優先なさってくださいますようお願い申し上げます。

うつは、心因性だけが原因ではない。身体的要因からも起こりうる。

駄目押しでもう一つ文献を挙げよう。

少し前に話題になった『知性は死なない 平成の鬱をこえて』與那覇 潤(よなは じゅん)著 文芸春秋(文庫増補版2021年)という本にも、

『近年ではあまり使われなくなった分類ですが、かつてうつ病には「内因性」と「心因性(反応性)」の2種類があるとされていました。字面からお察しのとおり、過労やストレスといった心理的要因への反応としてのうつ症状が出るのは、後者の心因性のうつ病。

前者の内因性とはなにかといえば、医学的にはまだつきとめられていないのだが、とにかく脳内にあるなんらかの要因によって、極端にいえばいっさい悩みやストレスがなくとも、脳の機能障害として発生してしまううつ病です。

したがって「うつ病はストレスが原因だ」という説明は、じつは半分にしか該当しません』 (前掲書P82~83より)

つまり與那覇氏のいう「脳の機能障害」という身体的条件が揃えば、うつは起こりうるということだ。そして化学物質は間違いなく、この「脳の機能障害」を起こさせることの出来る物質なのである。

なのに。現在の精神医療の場で、

「私、化学物質のせいでうつになってると思うんですけど・・・」

と言ってもまず通用しない。通用しないどころか下手すりゃ「この患者相当妄想癖がある・・・」と思われかねない。米国の診断マニュアル(DSM)の「うつの原因は問わず」の精神が深く浸み付いてしまっているからだ。

そのいい例が「引っ越しうつ病」というやつである。引っ越しをして、新しい家などに移ったらその奥さんがうつになった。どうにも気分が落ち込むので精神科に行ってみると、

新しい環境になかなか適応出来ないせいでしょう。引っ越しうつ病です。

などと言われ抗うつ剤を出されてしまう。

いやそれ違うでしょ、それは新しい家の室内の化学物質に依るうつ病でしょ、と私などはすぐ思うが、それは通用しない。「うつの症状が出ていればその人はうつ症」、であるからだ。

でもおかしくないですかそれって? 大体なんで、もしかしたら念願の「夢のマイホーム」に引っ越したのかもしんないのに、奥さんうつになるの? 落ち込むの? おかしいやんヘンじゃないけ。

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