除草剤グリホサートによって、腸内細菌のバランスは大きく崩れる。善玉菌であるビフィズス菌やラクトバチルス菌が死に、代って悪玉菌であるクロストリジウム属の菌や大腸菌、サルモネラ菌などが増殖する。
そのことによる病害が、もう一つある。発達障害と自閉スペクトラム障害である。

発達障害〔学習障害、注意欠如多動性障害(ADHD)〕や自閉スベクトラム障害は、大きくいえば脳の障害だ。脳の神経細胞のつながり(シナプス結合の形成)が未発達であったり、逆にそこだけ発達し過ぎていることから生じる。しかしではなぜ、脳の障害に腸が関連するのだろうか?
日本ではなぜかほとんど言及されないのだが、海外では以前から、自閉症と腸(消化管)との関連性はつねに指摘されていた。というのも特に自閉症の子どもに、腸のトラブル―便秘や激しい下痢―を抱えるケースが非常に多かったからだ。
アメリカの小児科学雑誌に掲載された結果によれば、自閉症の子どもとその家族918人の消化器の健康状態を調査してみたところ、自閉症の子どもの41%に消化管トラブルがあった。親の方は24%で、自閉症のない人は9%だった。この数字が偶然起こる確率は、統計的には1兆分の1.5の確率しかなく、自閉症と消化管トラブルはあきらかに関連性があることを示している。(『自閉症革命「信じることを見る」から「見たことを信じる」へ』 マーサ・ハーバート/カレン・ワインロードロープ著 星和書店2019年発行 P125より ①)
同じくアメリカの症例報告で、次のようなものもある。
帝王切開で出産した3つ子のうち、男児2人に自閉症、女児1名にてんかんがあった。
子どもたちの尿を調べてみたところ、除草剤グリホサートが高濃度で検出され、腸内細菌クロストリジウム属が増加していた。
食事をオーガニック農産物に変えてみたところ、グリホサート濃度は低下し、それと共に神経症状も緩和した。この結果から、論文研究者らはグリホサート曝露が腸内細菌に異常を起こし、そのために自閉症を発達させた可能性があるとした。この他9報の論文の総説でも、クロストリジウム属の腸内細菌の増加と自閉症の発症に、グリホサート曝露が関連しているという結果が出ている。(「除草剤グリホサート/「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性(上)木村―黒田純子 「科学」2019年 89号 岩波書店 P941より)
腸でのトラブル、特に腸内の炎症は脳へ移行するといわれる。内臓から脳へと走る迷走神経で伝わり、いわば”飛び火“するのだ。腸が破傷風菌に感染するとその神経毒が脳神経を犯すのも同じ仕組みだ。これを「腸内相関」という。(『脳と腸』エムラン・メイヤ―著紀伊園屋書店2018)
それゆえアメリカなどでの自閉症、発達障害の治療でよく行われるのが、実は食事療法なのである。特に小麦(パンやパスタ)を避ける“グルテンフリー”が行われる。グルテンフリーにすることで腸のトラブルが治まり、結果自閉症や発達障害の症状も緩和してくる。胃の痛みや神経の高ぶり(異様なハイテンション)に悩まされていた患者が、グルテンフリーにした途端消えたという話もある。(前掲書①P95)
欧米では一般的なこの自閉症や発達障害への食事療法だが、日本ではあまり行われていない。たいていが薬物治療になってしまう。が、食事内容や環境を見直すこと―特に農薬や環境中の化学物質を減らすことで、症状が緩和し改善される例がある。完全に治ってしまう人もいる。すべての人がこれで治る、とはいえないが、しかし“化学物質”という視点を取り入れることはきわめて有効かと思う。興味のある人はぜひ前掲書①を読んでみて欲しい。
それにしてもなぜ、小麦を止めると腸のトラブルが解消するのか。欧米人は小麦を、それこそ大昔から食べてきたはずだ。なのになぜ、現代になって小麦グルテンに腸がやられるようになったのか。
つまり小麦が、昔の小麦とは違うものになっているのだ。真の問題は小麦ではなく、小麦に付いている農薬―グリホサートだ。
ではなぜ、小麦にグリホサートは使われているのだろうか?
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