そこには何か、一種不思議な熱気、のようなものが漂っていた。
熱気というか、熱意というのか。うっすらとした期待感と、そして同じくらいの不安感も。
普通の病院の待合スぺースとは、あきらかに雰囲気が違っていた。普通はもっと、気怠いというか暗いというか。それはそうだろう、身体の具合が悪くて、何かの病気じゃないのかと思っていたり、あるいはすでに病気で通院を続けている人がほとんどなのだから。そうして皆自分の診察の順番が来るのを、じっと待っている。
それは私たちも同じだった。ここ北里病院のなかの待合スペースで、診察を受けるべく待っている。ふかふかした白いソファーに座っているのは、男女合わせて6、7人くらい。そうして一同、すぐ向こうにある「診察室」を、じっと見つめている。何やら熱い、フツフツしたものをたぎらせながら。
「前の診察が長引いているので、すみません、もうしばらくお待ち下さい」
その「診察室」から、看護師さんがきびきびとした足取りでやって来て、私たちにそう告げた。我々一同頷くと、また看護師さんはきびきびと「診察室」の内に戻ってゆく。
そこは、二重の自動ドアで仕切られていた。見ていると、どの看護師さんも皆、一つの自動ドアが閉まり切るまでは、もう一つの自動ドアを開けないよう、気を配っていた。特に、今私たちがいるこちら側から、内に入るときがそうだった。そうして極力、こちらの空気が内へは入らないようにしている。
あれが、”魅惑のクリーンルーム”か・・・。
私は思った。あの二重ドアの向こうは、こことはもう違う別世界。あのなかはこっちとは、まるで違う空気が流れている。まるで三ツ星高級ホテルかセレブ御用達クラブか。はたまたお城か宮殿か。とにかくそんじょそこらにある診察室とは”つくり”が違うのよオーホッホッホ!
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