杉並中継所が稼働して2年後の、1998年5月。津谷は某所で、ある一つのデータ解析に臨む。
それは、1997年1月30日に、東京都清掃局(杉並中継所を管轄している)が中継所/の南約200メートル地点で観測をした、その空気データだった。津谷は、その生データを請求して入手し、ある研究機関に頼み込んで、自動検索プログラムにかけ読み取らせたのだ。
必ず、出る・・・!
400種を越える化学物質が、次々と出てきた。これまで東京都清掃側が、一切発表してこなかった-つまり隠蔽/してきた-化学物質の数々。シアン化合物、アルデヒド類、水銀蒸気、プラスチックの可朔剤であるフタル酸類。なかでも津谷の目を強く引いたのは
「トルエンジイソシアネート」
という物質だった。
トルエンジイソシアネート、この「イソシアネート類」は、極めて高い毒性を持つ物質だ。
労働省が定めた、化学物質の「室内濃度指針置」というのがある。人が、一生健康で暮らしてゆける(であろう)室内の許容化学物質濃度を定めたものだ。
たとえばトルエンは、それによると0.07ppmとなる。
一方このトルエンジイソシアネートを指針値にあてはめてみると、
0.000007 となる。
つまりトルエンジイソシアネートは、トルエンに比べ、1万倍少なくなくてはならない。
それだけ毒性が高いのである。
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