仕掛けられたうつ(chaptor3)

8-14 りんご、食べますか?

「農薬」は、都市部であっても知らぬうちに、あらゆるところで使用されている。電車やバス、会社、公共施設やホール、病院、スーパーや飲食店。公園に行っても樹々に「農薬」は撤かれている。「農薬」混じりの空気を、私たちはつねに呼吸していることになる。そのことに気付かない、違和感も危機感も抱かないという異様な社会-農薬漬けといっていいほどの社会-が、いつの間にか出来上ってしまっていた。電車の中にもし一匹の虫がいたら、大騒ぎして殺虫剤を撒く、そんな自然から遠く離れた人間も含め。

また、農薬といえばどうしても無視出来ない、避けられないのが、やはり食べ物のことだ。野菜や果物等に含まれる、残留農薬の問題である。

こんな、小話がある。
りんごが一つ、目の前のお皿に丸のままのっている。さてあなたは、これをどうやって食べる?

70歳から上の世代の人は、皮つきのままがぶりと丸かじりして食べた。
40~60歳代の世代は、水でよく洗って皮を厚くむいて食べた。
10~20歳代の世代は、見ただけで食べなかった。なぜか?

70歳から上の世代の人たちは、子供の頃りんごにはさほど農薬は使われず、まぁ「安全」な果物だった。そのイメージがあるから丸かじりして食べられた。

次の40~60代の人たちの子供の頃は、有機リン系農薬が盛んに使われており、それが怖いので水でよく洗い皮も厚くむいて食べた。有機リン系は水溶性なので、洗えば表面の農薬は多少なりとも落ちたのだ。

しかしその次の10~20代の人たちは、今のりんごに使われているのがネオニコチノイド系農薬で、殺虫成分がりんご全体に行き渡る「浸透性農薬」であることを知っていたので、だから洗おうが皮を厚くむこうが煮ようが焼こうが、一向に落ちないシロモノであるとわかっていた。で、食べなかった。ハイ、それが一番の正解でした~というのがオチ。

という、笑うに笑えない小話があるのである。ハハハ…いや笑えない実際。

この小話からもわかるように、ネオニコチノイド系農薬は、洗っても何しても落ちず、極めて高い残留性を持っている。

しかも。

どういうわけか、日本の農産物におけるこのネオニコ系農薬の「残留農薬規準値」というのが、異様に高いのである。つまり残留する農薬の許容量が、世界規準よりずっと多い。

たとえば、先の小話で出たりんごである。

日本の残留規準値は2ppm。これはヨーロッパEUの2.5倍の量で、アメリカと比べても2倍量になる。
同じくトマト。日本は2ppmだが、これはEUの10倍、アメリカでも10倍多い値。
いちごはどうだろう。日本は3ppmで、これはEUの60倍、アメリカの5倍になる。
さらに、お茶の茶葉。日本は30ppmで、これは何とEUの600倍になる。600倍 !?
(「じっくり知りたい、ネオニコ系農薬問題の重要論点と日本の農薬規制のあり方」
 神戸大学大学院農学研究科教授 星信彦 資料[PDF][動画]を参照)

茶葉というのは、直接その葉にお湯を注いで飲むものである。その葉にこれほどの農薬が残留していて、はたして良いものなのか。少くとも日本の茶葉は、EU圏に持っていったら目をむいてつっ返されるレベルである。

ちなみに。今市販されているペットボトル入りのお茶類からは、ほぼ100%、このネオニコチノイド系農薬が検出されるのだという。そんな”農薬入り“のお茶を毎日ゴクゴク飲んでいて、大丈夫なのか。今は大丈夫と思えても、じゃあ2年後3年後は?

コメント

 
タイトルとURLをコピーしました