でもそんな私は、いつの頃からかまったく、表に出てこなくなっていた。
代わっていつも表に出ていたのは、イライラとしてつねに神経を逆立てている私。何だかよくわからない焦燥感に駆られている私。ささいな相手の言動に傷付き、それについていつまでもぐるぐると悩み続ける私。「将来の不安」に責め苛まれ押し潰されそうになる私。
そして、あるとき突然、わけもなく死にたくなる私。
うつだった。ここ何年もずっと私は、うつが続いていた。これまでに母は、過去に少くとも2回、「この娘はこのまま自殺するかもしれない」と思ったことがあった。また父も「自殺するかもしれないがそうなったらもう仕方ない」という、一種の諦らめと覚悟を固めていたという。それほどに私は、うつだった。
いやそれは、ついさっきまではそうだったのだ。ほんの1時間前、東京都M市のあの、ごみ焼却施設が目と鼻の先にあるという自宅から、父の運転する車で出てきたときには。
うつで、悲観度100%で、お先真っ暗。目に映るもの耳から入ってくるものすべてが、悲しくてやるせなくて、それがそのまま”死にたい願望”へと直結している。もう私は死ぬしか道はないんじゃないのか、などとえんえんと考えている。
しかしそれが、高速に入って幾つかのインターチェンジを抜けてゆくうち、変わってきた。頭の周囲にどろどろもくもくとかかっていたような黒雲が、少しずつ薄れてくる。そしてある時点で、まるで霧がさぁっと晴れるように失くなった。自分でも驚くような、劇的な変化だった。
頭の中は、いつの間にかすっきり晴れ渡っていた。もう何を見ても悲しくはなく、何を聞いても怖くない。死にたいなど露にも思わない。さっきまでのあの強力なうつ、〝死にたい願望〟は何だったのかと思うほどだ。まるで悪い夢から、ぱっと醒めたような。
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