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まるで夜逃げじゃん！！

そう思った途端、何だか笑いが込み上げてきた。どこをどう見たってこれは、夜逃げの車。

今や車の内は、ありとあらゆる荷物でギュウギュウのぱんぱんだった。トランクはもちろん後部座席まで、布団やら何やらの私の荷物がめいっぱい詰め込まれている。座るところもなくて、私は片隅にかろうじてお尻を置き、あとは窓にへばり付いてる状態だ。なんじゃこれ。どう見たってこれは、家族で夜逃げするの図、だよ。

そんな荷物を満載した車が、父の運転で出発したのは、2001年の4月11日、その早朝のことだった。これから一路、車は静岡県下田市へ向かう。

その前日の4月10日、私はN県の父の別荘を引き揚げ、また東京М市の家に戻ってきた。予想した通り、その道中はかなり過酷なものになった。

のっけに乗ったローカル線の電車からして、すでにキツかったのだ。乗って10分も経つと、目がチカチカ、鼻の粘膜は針で刺されたようにちくちくし始め、全身だんだん気持ち悪くなってくる。私はにおいはよくわからない(当時)のだが、でも何かは感じる。車内消毒剤、殺虫剤、クリーナーの類か。化学物質。苦しい。

呼吸する一息ごとに、苦しくなってくる。次に乗った新幹線は、ラクではなかったがローカル電車よりは幾分マシだった。とはいえ座席には座れず、連結部の乗車出入口の脇にずっと立ってやり過ごしたのだが。すでに体力はかなり消耗している。

東京駅に着く。次に乗る電車の乗り場がよくわからず、駅構内を右往左往する。人、人、人。人の多さで目が廻り、頭がくらくらしてくる。足ももつれ、どんどん歩くスピードが落ちてゆく。ヨタヨタのヨレヨレ。何人もの人に追い抜かれる。ああなんてあの人たちは、元気に歩いているんだ・・・。

やっと乗り場を見つけ、乗った。ところがこの車内がものすごくキツかった。何だかいろんなものがミックスして、すごい“圧”でこっちに襲いかかってくる。あぁへたり込みそう。苦しい。息絶え絶え。「早く着いてくれ、早く着いてくれ」ともうそれしか考えられない。そんな感じで何とか家の一番最寄りの駅に着いたときには、疲れを通り越し半ば液状化しそうだった。ぐでぐでのドロドロ。まぁよく途中で倒れなかったものだと思った。倒れて病院に搬送されようものなら、その病院の消毒剤やらワックスにまたやられちゃうしな・・・。

やっと家に着き、それでもホッとした。約1か月ぶりに帰ってきたことになる。

しかしやっぱり周囲の空気は良くなかった。ごみ焼却の空気はハンパなくキツい。身体にずしっと重く、まるで液体の内にいるようだ。反応し、首のリンパ腫も、ぎゃんと張ってくる。久々に飼い猫のトンちゃんとも再会する。

会いたかったよオオーと近付くと「誰じゃお前は？何奴だ」って目で見られた。ショック。この日これが、一番切なかった・・・。