病名を知るということは、ことCS(化学物質過敏症)に関していえば、それはつらいことでも不幸なことでもない。病名がわからない方が、遥かにつらく、苦しい想いをするからだ。
『化学物質過敏症患者の「二重の不可視性」と環境的「社会排除」』 寺田良一(明治大学文学部心理社会学科・教授)という2016年の論文がある。(明治大学心理社会学研究 第12号2016)
このなかで寺田氏は、1200名のCS(化学物質過敏症)患者にアンケート調査を実施し、うち664名から回答を得ている。
「化学物質過敏症と診断されるまでに要した時間」を尋ねた質問には、
「受診をしてすぐに診断された」・・・28.2%
「1年以内」・・・17.7%
と一年以内の患者の合計が45,9%なのに対し、
「1年以上5年未満」・・・21.3%
「5年以上10年未満」・・・10.7%
「10年以上」・・・13.0%
と、一年以上かかった患者の合計は45%になり、約半数弱に上っていることがわかる。
また、「化学物質過敏症と診断されたときの気持ち」を尋ねた質問には、
「これまで自分に起きていたことが理解でき納得することができた」・・・69.1%
「これからの家庭や仕事での生活面に対して不安を覚えた」・・・57.6%
「治癒する見込みや治療方針の展望を持つことができず暗い気持ちになった」・・・47.8%
「今後の暮らしや治療方針を考えることができるので良かったと思った」・・・37.1%
という回答が出ている。(複数回答)
さらに、「別の病気と診断された経験」の質問に対しては、
自律神経失調・不定愁訴・・・40.1%
その他・・・29.3%
心因性障害(過度のストレス等)24.0%
更年期障害・・・17.6%
うつ病・躁うつ病・・・17.0%
不安障害・・・10.0%
パニック障害・・・8.0%(複数回答)
という結果が出ている。この結果を受けて寺田氏は、
「全体として、明らかに患者は何らかの身体症状を訴えているにもかかわらず、こうも心因性の病気に取り違えられるものかという印象がぬぐえない。」
と述べている。(同論文P66より)
2010年になっても、私の頃とほとんど何も変わっていないことに、溜め息が出る。なぜこんなにも、CS(化学物質過敏症)患者の置かれた状況は判で押したように変わらず、ただ繰り返されるだけなのだろう?
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