病名を知るということ

2-21 夕暮れの記憶

ある日に見た夕暮れの景色を、私は未だに覚えている。
まだ病名も何もわからずに、ただ自宅で療養していた頃のことだ。
例によって朝起きられず、午後の2時過ぎに目が覚めた。慌てて起きて朝食を食べ、外に出掛けた。

とにかく・・・図書館へ行こう。行って本を借りてこよう・・・
それだけのことでも、何か「意味」はあるのだと、必死に自分に言い聞かせていた。一日多少意味のあることをしなければ、自分が消えてしまいそうだった。その図書館で借りた本とて、結局最後まで読み通すことも出来ず、また返却することになるのだが。それもわかっていたのだけれど。

図書館に向って歩いて行くと、道の向こうに夕焼けが見えた。私が起きて、たった2時間で、日はもう沈みかけている。
何を、やっているんだろうなぁー・・・
ものすごく空虚だった。今の自分は、地上から2センチくらい浮いて、この道を歩いているんじゃないか。すべてに現実味がなく、何もかもが、そのまま溶けてなくなってゆくような・・・
それ以降も、大変なことはたくさんあった。
けれどあの頃が、一番つらかったような気がする。

第2章をイッキ読み

第2章の全文掲載完了に伴い、日々のブログ記事を1ページにまとめたイッキ読みのページをご用意させていただきました。
長文となりますがご興味をいただけましたら、お読みいただけましたら幸いです。

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奥野井タリカ 私の化学物質過敏症(CS)

コメント

  1. 未来を信じる沈黙の春 より:

    こんにちは。多種類化学物質過敏症(MCS)と戦う物語というだけでなく、タリカさんの人生の物語として、興味深く読ませて頂いております。この物語をきっかけに、世の中のMCSへの理解がさらに深まっていくといいですね。決してお体に無理なさらないで、ウェブ更新してください。

    • 奥野井 タリカ 奥野井 タリカ より:

      コメントをお寄せ下さり、本当にありがとうございます!
      化学物質過敏症の闘病記としてだけでなく、「人生の物語」としても読んで下さって、本当に嬉しいです。身に余るお言葉です。ありがとうございます。
      このブログを、同じ化学物質過敏症の患者さんはもとより、この病気のことをまったく知らない方々にも読んで頂けたら、そうして「化学物質」そのものに少しでも目を向けてもらえたら...と思いながら書いています。
      お名前にある「沈黙の春」は、農薬をはじめとする化学物質の恐ろしさを、最初に世に問うたレイチェル・カーソンの書名、ですね。
      虫も、鳥の鳴き声も全く聞こえない、そんな春を到来させないためにも、頑張って書き続けてゆこうと思います。
      これからも、どうぞよろしくお願いします。

  2. 未来を信じる沈黙の春 より:

    こんにちは。発症当時から非常に体調不良であったにも関わらず、克明に記録を残し、世の中に化学物質過敏症(MCS)や人工化学物質の恐ろしさを知らしめるためにブログで公表なさり、本当に素晴らしいことだと感嘆しています。
    現在の地球規模の環境汚染、異常気象など、化学物質蔓延の悪影響はまったなしの状況です。
    杉並病の原因究明に力を尽くした故津谷裕子博士は、日本のレイチェル・カーソンでした。津谷先生は、衣類柔軟剤中のマイクロカプセルの材料として有名なイソシアネート類が、身の回りの様々な製品に含まれており環境全体に広がりつつあることを大変危惧され、日本人が死に絶えてしまうのではないかと遺言的発言を残されました。(「環境に広がるイソシアネートの有害性」津谷裕子・内田義之・宮田幹夫著)
    この病気の現状を世の中に知ってもらい、患者の増加や環境汚染の蔓延を防ぐためにも、私たちが頑張っていかなくてはなりませんね。
    どうかご体調に留意され無理することなく、ブログ更新してくださいね。全力応援しています。

 
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