奥野井 タリカ

北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-19 杉並病と化学物質過敏症

郷里和歌山に戻った星谷も、安全な暮らしとは程遠い日々だった。近所で頻繁に燃やされる家庭ごみや野焼きの煙、排水より立ち上ってくる合成洗剤のにおい、車の排気ガス…どこへ逃げても何かが追いかけてきて、身体は反応した。激しい症状が出て、そのたびに倒...
北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-18 凄まじい反応

津谷裕子と星谷昇子はともに、稼働2か月後の6月に、重篤な状態に陥る。津谷は自宅で意識消失しかけ、星谷は呼吸困難になり、病院に救急搬走され入院となった。そして退院後は、自宅へは結局戻らないまま、転居する。井草の自宅に戻れば、入院でやや治まって...
北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-17 感作

症状が、汚染空気の有無によって、出現したり消失したりする。それはつまり、身体が汚染空気に感作している、ということを意味していた。「感作(かんさ)」とは、症状を引き起こす原因物質に、反応するようになることをいう。そしてその物質に接触するたびに...
北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-16 離れると消えてゆく症状

多くの住民が、杉並中継所から流れてくる「異常な空気」、汚染空気の存在を感じていた。そしてこの汚染空気の状況、その濃度によって、症状が出たり引いたり、激しくなったりやや軽くなったりすることにも、はっきりと気付いていた。平成11年(1999年)...
北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-15 もや

6月に入ると、突然顔中真っ赤に腫れ上がり、大慌てした。が、外出して井草地区を離れると、帰る頃には腫れはきれいに引いていた。しかし自室へ戻ると、また腫れは再燃する。「空気が、おかしい」。そんな噂を聞き、星谷は慌てて開け放っていた窓を閉めた。す...