と、このような生活面での改善、身の廻りにある”化学物質”を取り除くべく方策が取れたのも、「CSネット」のホームページ情報のお陰だった。そこに載せられていた、日本全国津々浦々に散らばっているCS患者たちから寄せられた、まさに血の滲むような情報のお陰。
それはまさに、CS患者たちの思索と知恵、創意工夫の宝庫だった。
この化学物質が溢(あふ)れる世界のなかで、いかにして化学物質を避けるのか。生活の中に持ち込まないようにするのはどうしたらいいのか。使えないものの代替品は何がいいのか。無農薬野菜はどこで手に入るのか。刺激のない衣類は?布団は?浄水器や空気清浄機はどこのメーカーのものが良くてどこのがダメだったのか。針やマッサージは効くか。サウナはどうか。歯の治療はどうするか。サプリメントは効果があるのか・・・等々等々。
それぞれの患者たちの、トライ&エラーの数々。まさに現場の、生きた情報がぎっしり詰まっていた。それらのノウハウの一つ一つ、失敗したネガティブデータの一つ一つが、貴重だった。それが”次の”患者たちを確実に助け、事によっては救いさえしたからだ。まるで手渡しのバトンのようにそれは、患者から患者へと、手渡されてはつながれてゆく。私などもそのバトンに、大いに助けてもらった一人だった。
思うに、当時の患者たちはどの人も―おそらく初期の患者ほど―このまるでわからない病気を前に、必死になって一つの「地図」を作ろうとしていたのではないか。見えないなかを手探りして、懸命にこの病気を、その”かたち”を見極めようとしていた。そうして一つ一つの空白を埋めるように、「地図」を作っていたのだ。後の人が迷わずに済むような、「CSの地図」を。
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