北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-15 もや

6月に入ると、突然顔中真っ赤に腫れ上がり、大慌てした。が、外出して井草地区を離れると、帰る頃には腫れはきれいに引いていた。しかし自室へ戻ると、また腫れは再燃する。

「空気が、おかしい」。そんな噂を聞き、星谷は慌てて開け放っていた窓を閉めた。
すると今度は、窓やあちこちの隙間から、汚染空気がじわじわと家の中に侵入してくるのが、わかった。それはもやのような感じのもので、そのもやが身体にじっとりと巻き付いてくるのが感じられる。すると途端に肩や胃がけいれんを起こして小刻みに震え始め、呼吸も苦しくなった。また一種の焦燥感に襲われ、居ても立ってもいられなくなり、部屋中を「熊のように」ウロウロと歩き廻ってしまう。

©SORAIRO

何なのこれ…頭がどうかなってしまったんじゃ…

もや状の空気、身体に巻き付いてくるそれ。そして巻き付かれると途端におかしくなる自分…。まるでホラー映画か何かの世界に、入り込んでしまったかのようだった。

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