仕掛けられたうつ(chaptor1)

6-16 押入れの悪魔

けれど一つだけ、何年も後になってからあっと思ったことがある。押し入れだ。

アパートを引き払うことに決め、その引っ越し荷物をまとめに行ったときのことだ。中に入っている物を出そうと、そのドア式の押し入れの戸を開けた。

途端に中から、驚くほど甘っぽい空気が出てきた。まるでガス体のような、もわああんとしていた重たい空気が。

一瞬ですぐわかった。「あ、バルサンだ。」昔実家でも何回か使ったことのある、あのくん煙式殺虫剤のニオイ。同じニオイ。

もしかしたら大家さんが、私が入居する前にその押し入れの中にバルサンを置き、とは閉めずに部屋中の殺虫処理をしたのかもしれない。それで濃厚に押し入れに、この殺虫剤特有のニオイとその成分が浸み込んだのかもしれない。

そして私はこの2年の間、この押し入れのすぐ前に布団を敷き、押し入れの方に頭を向けて寝ていたのだった。戸はもちろん閉めている。が、密封されてるわけではないから、中から少しずつ漏れて漂ってはいただろう。それと寝ながら私は、吸っていた。吸い込んでいた。2年間の間ずっと、この異様に甘い空気を。

畑や果樹園の近くで育ったわけでもなかった私が、このときより4年後に農薬(有機リン系殺虫剤)で倒れ化学物質過敏症を発症したのは、その伏線は、ここから始まっていたのだろうか?

第6章をイッキ読み
第6章の全文掲載完了に伴い、日々のブログ記事を1ページにまとめたイッキ読みのページをご用意させていただきました。 長文となりますがご興味をいただけましたら、お読みいただけましたら幸いです。
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奥野井タリカ 私の化学物質過敏症(CS)

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