仕掛けられたうつ(chaptor2)

7-6 これは私の感情なのか?

注意! 本章には、かなり強いうつ、自殺衝動の描写があります。フラッシュバックやPTSD等を懸念される方は、どうぞ体調を優先なさってくださいますようお願い申し上げます。

しかし。

「思う」のと「やる」のとは違う。

「死にたい」と思うのと実際に「自殺する」との間には、なおかなりの距離がある。あるはずだった、少なくとも私の場合は。

だから、これほど日常的に死にたい死にたいと思っていた私でも、実際にそうしようと具体的に行動したことは、今まで一度もなかった。本当に一度もなかったのだ。

しかしこの「洗たくロープ事件」のときは、違った。レベルというのか、位相のようなものが、全然違っていたのだ。

一言でいえば、あやつられている、ような感じだった。なぜこんなに、強力に強烈に死にたいと思うのか、自分でも本当にはよくわからない。わかってない。全然符に落ちてないのだ。でも自分の中の8割はもう、あたかも自動運転に切り換わったみたいに、どんどん自殺決行へと突き進んでゆく。私の意志は置いてけぼりで、勝手にどんどん。

これは何なのか?

しかもである。

その強い死の欲求を、地蔵化することで懸命に我慢していると、ある瞬間を境にしてふっと、その自殺衝動が消えたのだ。嵐を抜けたかのように、パッと。それで気が付けばもう、別に死にたくもない。

何だ、これは・・・

一瞬で、正気に戻ったような感じだった。すぐに思ったことは、これは発作なんだろうか?ということだった。でも「突然わけもなく死にたくなる発作」なんて、あるものなんだろうか?

もう一度私は、ベランダの洗たくロープを見た。しかしもう何も感じなかった。あんなに激しく執着していたのに、今はもう何も。洗たくロープは、ただの洗たくロープに戻っていた。

ではつまり、私は本当には死にたくはなかった、ということになる。私の本意ではなかったことになる。

じゃあ何が、私をそうさせていたのだろうか?

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