有吉佐和子『複合汚染』には、他にも食品添加物を断固として拒否した、京都の漬物屋さんの話が出てくる。
有吉の知り合いに、「横丁の御隠居」なる人がいた。味に大変うるさく、
私はもう老先短いのですから、せめて、うまい飯と、うまい漬物だけ喰いたい
と言うのが口癖の老人。取材で地方へよく行く有吉は、お土産に漬物を買ってきてよく渡すのだが、どれも
不味い
と言って喜ばない。そこでこの京都の漬物屋のしば漬を持って行ってみたところ、大喜びで電話をかけてきた。
どうも驚きましたな。何年ぶりですかな、昔のしば漬に出会ったのは。
あなたも、なかなかやるじゃないですか
しかしその京都のしば漬は、市販のものとは違ってパリパリシャリシャリしておらず、「ペチャン、クチャンとなってて歯ざわりはあんまり良くない」と有吉には思えた。
そこで有吉は、その京都の漬物屋を訪ね、主人の親爺さんにその理由を尋ねる。
『
あのォ、この店の漬物は、よその漬物と較べて、パリパリシャリシャリいわないんですけど、それはどうしてですか
それはまぁ、私とこは塩しか使うてない漬物屋やからですわ
はぁ、ですけどそれとパリパリシャリシャリは
よろしいか、野菜に塩つけて、重いもので押しをかけます。
これが漬物の作り方です。
古くは中国から伝来した昔ながらの方法ですねん
はぁ、はぁ
塩は防腐剤ですねん。
保存料ですねん。
漬物は保存食ですわな
ええ
ところが塩して押しすると、水が出ます。
漬物だけの目方が軽うなります。
目方で売る商品やから、軽うては損やと思う漬物屋は水入れてふやかします
まあ
すると腐りやすうなります。
当たり前ですわな
ええ
そこで防腐剤を入れますのや、よそさんは。
良心的な漬物屋は、私とこだけではおまへんけど
まぁ、それで防腐剤が入るんですか
防腐剤入れると味が落ちます。
それで味の素やら何やらの調味料ですな、それを入れます。
スーパーで山積みしてある漬物の袋眺めてると、私は何やら怖しゅうなってきますわ。
防腐剤ちゅうのは毒でっせ
』
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