CS三界に家がない!

9-11 求ム!山奥ポツンな家

 あっ。確かに母の言う通りだった。CSゆえ他の人と御一緒、というのは極めて難しい。ということは、どこかの家の間借りをする―離れとか2階の一室だけ借してもらう―というのも基本無理ということだ。うう、駄目か。

 他にも、父方の祖母の家、とか、友人の親が所有している別荘、とかあれこれ考えた。が、どれも現実的に考え出すと難しい点が多い。

 あぁ何てやっかいな!! 行くとこないじゃんかよ!!

 「逃げる」ということだけ考えれば、どこにだって逃げられそうな気がするのだ。ところがいざ実行に移してみると、条件があまりにも厳しいことに気付く。愕然する。もちろんその条件とは、「化学物質がそこにない」という単純なことだ。空気と水が良く、田畑の農薬や車の排気ガスや工場等の煙がない、というところ。

 そんなとこ探せばゴマンとありそうな気がするではないか。ところがないのだ。本当にない。「山奥のポツンと一軒家」を探しゃいいじゃんと思われるだろうが、そういう家の持主が家を借してくれるとは限らない。またそういう山奥のポツンな場所に賃貸アパートなんて建っているはずもない。

 なるほど七尾さんが、
 「CSは自分たちで環境の良い土地を探し、そこに家を建てて住むしかない」

 と言うわけである。こういう現実的な厳しさがあるから、それを熟知していたからこそ、こんな一見無茶苦茶に思えることも言えたのである。

 一度母に、半ばヤケで「七尾さんはこう言ってたよ」と告げたことがある。
「結局、自分たちで家建てないとダメだって」と。

 すると母は、

「あぁ・・・なるほど」

 とひどく納得がいった、という顔をしたのだった。目からウロコが落ちました、というような。てっきり、そんなこと出来るわけないじゃない、と言われるかと思ったのに。

自分たちで土地を探し、家を建てる。それのための家を。

荒唐無稽というか、ほとんど「絵に描いたモチ」。実現可能とは到底思えなかったこのことが、あれ?意外とそうでもないの? と私の方は私で母の表情から読み取ったのだった。

これが、今から考えるとこの後につながる、一つの萌芽だった。

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