CS三界に家がない!

9-24 初めての患者仲間

N県の父の別荘に到着。それでさっそく、紹介してもらったCS患者の松本かなえさん(仮名)に連絡を取ってみた。まずは電話で。ちょっとドキドキ。

最初はしかし、警戒されているのかなかなか打ち解けてはもらえなかった。声が固く、ぶっきら棒。七尾さんに頼まれたから渋々、という気配があり、別にそれを隠そうともしない。ある意味すごく正直な人だった。

それでも、そこは同じ病気の者同士。どんなことを言っても「あー、わかる」だし、「そうなんだよね。」となるので自然と会話が成立する。はずんでもくる。

ぶっきら棒であったが、彼女は訊けば何でも答えてくれた。わからないことは「わからない」と言ってくれるし、答をごまかしたりもしない。見得とか自慢する気持ちから話を盛ることもまったくなかった。何というか実にもう、率直できっぱりとしているのだ。それは見事なほど。ぐじぐじ、ベソベソと物を考えがちな私には、話してるだけで何やら喝ッ!か入る。

けれど何度か話すうち、何となくわかってもきた。彼女のこのきっぱりさは、ものすごい修羅場と地獄を、何とか潜り抜け、その全部を「あっちに捨ててきました」という、その上で成り立っているきっぱりさ、なのだ。たぶん。

松本さんはシックハウスでCSを発症していた。

「結婚と同時に、夫の両親が建ててくれた家に入ったわけ。新築一戸建てのね。それがすごい、すさまじいシックハウスだったの。

入居したその晩からもう、もうおかしくなった。喉は痛い、咳は止まんない、頭はキリキリ、もの凄い頭痛。で、ほんとあっという間に化学物質過敏症になっちゃった」

「そんなひどい家だったんですか・・・」
「そう。後でホルムアルデヒド濃度剤ってもらったら、WHОの基準値、の8倍とか10倍とか軽く出て。床下の白アリ駆除剤はクロルピリホスだったしね。CSを発症しない方がおかしい位の家だった。でも今も夫と夫の両親はその家に住み続けているのよね。大丈夫なのかしらー。まぁ別れたからもう関係ないんだけど」

松本さんの夫や両親は、彼女がどんなに具合が悪くなっても、シックハウスのことも化学物質過敏症のことも認めようとはしなかったという。

「北里病院の診断書を見せても駄目だった。全然、取り合ってくれない。東京くんだりまで行って高価いお金出してヘンな診断書医者から貰ってきた、それで自分らに嫌がらせしてくる嫁…っていうそういう扱いなの。

あの人たちの頭にはね、『私らが建ててあげた家に文句つける気か』ってことしかなかった。だから『嫌なら出て行け』。その一点張り」

渋々と、彼女は話す。私は何て言ったらいいのか、わからない。

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