CS三界に家がない!

9-32 北国から南国へ

というわけで、荷物をギュウギュウに満載した車が出発。目指すは南国、静岡県は下田市。運転する父は、カーブを曲がるたびに「車が重い!」と声を上げた。そりゃそうだ、ほとんどこれは引っ越し車、なんだから。

高速を走り、御殿場インターを越えた辺りから、空気がぐんぐん良くなってくるのを感じた。都会特有の、車の排ガスなのかホコリっぽいような空気のザラつきが、薄れて澄んでくる。やっと少し楽になってくる。

沼津で高速を下り、その後はバイパスを走ってゆく。上り坂や下り坂が増える。有名な「天城越え」もしたらしい。どこか峠でどこが“天城”なのか、私にはさっぱりだったが…。あまぎーご~え~。

その天城越えの後辺りから、見える風景の色合いが、ぐんと変わってきた。山の色、樹々や草の色、土の色まで、全体に明るいパステルカラーなのだ。植物は黄緑、土は赤っぽい茶色、そして道路の向こうにチラホラと見え始めた海は、キラキラしたスカイブルー。

その明るさが、何だか嘘みたいに見えた。この開放感、この明るさは何?どういうこと?まるで夢の国のよう。つい二日前まで北国のN県にいたから、余計にそう見える。何やらCSでモンモンと悩んでたことさえ、バカバカしくなってくるような・・・これが南国感か~。

下田市に入り、さっそく当のアパートに直行。不動産屋さんからは、”CSをよく知っているオバサン”ことタナハシさんが、鍵を持って待っていてくれた。

2階建てアパートの、1階の角部屋だった。入ると、あらけっこう広い。7.5畳のキッチンに8畳のリビングルーム。もちろん風呂、トイレ付き。リビングの奥にはベランダもあった。これで家賃は東京より4万弱安いのだから驚く。

「畳は、外しておきましたよ。お父さんの御指示通り」とタナハシさん。

見ると確かに、リビングルームの床がベニア板むき出しになっていた。もともとは畳敷きだったのだが、畳に反応するCS患者が多いと聞き、父が頼んで撤去してもらっていたのだ。

「この上に直接、持ってきたカーペット類を敷けばいい」と父。うん、なるほど。

一泊、3人で仮泊まりする。多少床のベニア板のにおいはするが、こたえるほどではなかった。何より窓から入ってくる空気が、軽くて甘い。とてもマイルドだ。前日の東京M市の家に比べれば、まるで天国。混じり気のない、化学物質の少い(ないとはいえない)空気が、こんなにいいものとは・・・はぁ~!
こうして、私の下田暮らしが始まった。東京M市のごみ焼却空気から逃げ、逃げた先のN県のりんご農薬からもまた逃げ、やっと辿り着いた、南国下田。

ここなら私、何とか大丈夫じゃない?やっと逃げ回らず、安全に暮らせるんじゃない?

そう思えた。

コメント

  1. 未来を信じる沈黙の春 より:

    タリカさん、ブログ管理人さん、こんにちは💞今回も重要なお知らせですが、以下はカナリアネットワーク全国さんのからのお知らせです。

    『【CAN会員からのお知らせ】「自薦ヘルパー制度」のご紹介
    2025.05.18
    香害被害者の中には、訪問介護士や訪問看護師による香害に困っている方がおいでです。
    ご家族の介護、ご自分のケアにも支障が出ている事例を見聞きします。

    一般的に訪問介護ヘルパーは、訪問サービス事業所から派遣されますが、利用者が自分でヘルパーを見つけて、全国ホームヘルパー広域自薦登録協会に登録することで介護を受ける、「自薦ヘルパー制度」というものがあります。

    会員の加藤やすこさん(いのち環境ネットワーク主宰)から、この「自薦ヘルパー制度」を皆さまにご紹介したいとご連絡がありましたので、お知らせいたします。

    詳細は、「会員専用ダウンロード」https://canary-network.org/group/kaiindl/ の「自薦ヘルパー制度」から、いのち環境ネットワークの会報記事をご覧ください。
    なお、CAN事務局では、この制度の仲介等は致しませんこと、ご承知おきをお願いします。』

    https://canary-network.org/news/jisenhelper/

    私の周囲でも、体が不自由な高齢のCSさんやESさんが、ヘルパーさんが必要でも家に人を入れたくなくて我慢していると言う話を聞きます。自薦ヘルパーさんが役立つことを心から祈っております🙏

 
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