北里病院・魅惑のクリーンルーム

3-9 診断が欲しい

やっとここまできたんだなぁ・・・

白いふかふかソファーに座り、目の先の「診察室」をじっと見つめながら、私はそう思った。5ヶ月待ちというのはやはり相当長く、その間もどんどん身体がおかしくなってゆくので、待っている最後の頃はもう、半ば祈るかのようだった。早く、早くこの日になってくれ、と。

それはたぶん、この同じソファーに座って待っている他の患者さんたちも、同じはずだ。何日も何ヶ月も、ことに依ると何年も、この日が来るのを待っていたのではないか。

想いはおそらく、私も彼らも寸分違わない、
診断を貰いたい。

「化学物質過敏症」と、正しく診断してもらいたい。

普通とは逆なのだ。病気ではないことを望んでいるのではなく、間違いなく病気であることを望んでいる。検査や医師の所見に基づいて、医学的見地から正しく「化学物質過敏症患者」であると、認定して欲しい。

私たち患者にとって、「化学物質過敏症」の診断を得ることは、ほとんど「身分証明書」を得ることに等しいのである。

だから、うっすらと漂っている不安感というのも、通常とはまた逆なのだった。

もしも、自分が化学物質過敏症と診断されなかったら、どうしよう・・・なのだ。そうなったらまた、あの混乱と混沌の渦の中に逆戻りになってしまう。何もかもがわからない、自分で自分の精神までも疑うような、あの大混乱の渦の中に。一本のか細い糸を手繰るようにして、やっとこの病院に辿り着いた人ばかりなのだ。だからその不安も、痛い程わかる気がした。自分がまさに、そうだったから。

※これは2,000年当時の話です。現在北里病院では、これらの治療は行っていません

第3章をイッキ読み
第3章の全文掲載完了に伴い、日々のブログ記事を1ページにまとめたイッキ読みのページをご用意させていただきました。 長文となりますがご興味をいただけましたら、お読みいただけましたら幸いです。
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奥野井タリカ 私の化学物質過敏症(CS)

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