北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-2 前後左右、全方位囲まれてます!

また、必ずしもシックハウスがもとで発症した患者でなくとも、過敏症状が進行すると次第に合板家具にも反応を起こすようになると、私は読んだり聞いたりして知っていた。どれほど長年愛用した家具でも、反応が出ると使えなくなり、破棄せざるを得ない、と。

私はまだ反応してないけど…でも早いうちに遠ざけてしまった方が、いいんだろうか…?

そうすれば、これ以上悪化するのを防げるのかもしれない。そう私は考えたのだ。

そうですね、他の部屋に移動するのが可能ならば。でもなかなか、スペース的にそう余裕のあるお宅は、少ないでしょうね

…そうだ。その通りだった。「合板家具を撤去する!」なんて口で言うのはたやすいが、実行するとなるとトンデもなく困難なことになる。

それはちょっと、今自分がいる部屋を思い浮かべてみるだけでも、すぐに思い知る。

私は8畳ほどの部屋の、そのど真ん中に布団を敷いて寝ていたのだったが、たとえば寝ながらちょっと、顔を右に向けてみると、

目と鼻の先に、洋タンスどーん、その隣に和ダンスどーん、さらにその奥に引き出し付きの本棚(でかい)どどーんっ。

そうして左を向いてみれば、

中サイズの本棚どーん、カラーボックスが2つどーん、引き出し付家具がどどーんっ。

これら全部が、合板家具だった。合板家具じゃない家具なんて、ほとんどなかった。唯一あるのは、窓際にある和机ぐらい。いやいやどーするのよ!?この合板家具の数々ッ!

寝ながら見上げていると、何やらタンスが高層ビルのように見えてくる。本棚もそうだ。ぬぉぉぉと、そびえ立っているではないか。ここはどこ?日本なの?合板家具のニューヨーク、ウォールストリート街じゃないの?っていうか私、完全に囲まれてるじゃないの…!

この大量の合板家具を、他のどの部屋に移せるというのか。他の部屋だって同じくらい、本棚やらタンスやらが置いてあるのだ。無理。っていうか不可能。先生の言われる通り、どこにも空きスペースなんてない。

沈黙

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