北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-26 柔軟剤からなぜ?

このときから約17年後の、2015年夏。津谷はふたたび、このイソシアネートと対峙することになる。

「大変!イソシアネートの値が高過ぎる!!」

計測器の目盛りを見て、津谷は思わず声を上げた。2台持ち込んだ計測器のうち、1台の針は高い数値を指し、もう1台の方は針が振り切れていた。およそ信じられない、目を疑うような値だった。

杉並病の苦い、手痛い経験を経て、津谷はその後NPO法人「化学物質による大気汚染から健康を守る会」(通称VOC研)を立ち上げる。大気汚染が起きたとき、その当事者たちが行政に頼ることなく、独自に空気中の汚染化学物質を調べられる-そんな市民団体が必要だと考えたからだ。計測機器を買い揃え、それを貸し出したり、自ら計測に出向いたりする活動を、津谷は精力的に行っていた。

このときもまた、津谷はつくば市にいた。同市に住む女性から、
「柔軟剤のにおいが苦しくてたまらない。発作を起こして病院に入院したが治らず、そのまま退院した。家に閉じ込もっているがそれでも苦しい。空気を調べて欲しい」

そう頼まれたからだった。同じような訴えは、守谷市の夫婦からも受けていた。

計測器は、イソシアネートの異常な高数値を差し示す。

柔軟剤が原因?

「柔軟剤です、絶対」 そう主張する女性に津谷は、
「そんなはずはない。柔軟剤からイソシアネートのような猛毒が出ているはずがない」と反論し、「近くに廃棄物処理場があるはずだから、調べてみなさい」と言った。

しかしすぐに、それが女性の言う通りだったことがわかる。柔軟剤から、イソシアネートが出ていた。

なぜ・・・柔軟剤から・・・?

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