北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-23 強力なアレルギー物質

さらにもう一つ、このイソシアネート類に特有の、大きな特徴があった。

このイソシアネート自体が、強力な「アレルギー物質」である、という点だ。

つまり、イソシアネートを吸引したり接触したりして曝露すると、身体が「感作」され、イソシアネートに特異的に反応するようになる、ということだ。それにより、各症状が出てくる。イソシアネートアレルギー体質に、身体が変わってしまうのである。

やや専問的になるが、そのプロセスは次のようになっているらしい。
イソシアネートが身体の内に入ってくると、血液成分の一部と結合して、抱合体というものが形成される。この抱合体はいわば、イソシアネートと我々ヒトの組織との、ドッキング物質だ。

この抱合体にどうも、免疫細胞が反応し始めるのである。免疫はそもそも、細菌とかバクテリアとかの異種生物、異種タンパクに反応するよう出来ているのだが、ヒトの一部がこの化学物質にくっ付いているからなのか、俄然活性化してこの抱合体を、

「敵!!」
「攻撃して排除すべし!!」

と認識してしまう。そして免疫B細胞をけしかけて、抗体をつくらせる。抗体とは、免疫細胞が「敵」に対してオーダーメイドでつくる飛び道具、武器のようなものだ。その「敵」にだけ、特異的に反応するようつくられている。TDIIge、トルエンジイソシアネートIge抗体である。

一度この抗体が出来上がってしまうと、その「敵」が入ってくるたびに免疫は功撃するようになる。抗体というもの自体が、一つの記憶だからだ。そしてその記憶が完全にリセットすることは、ほぼないといっていい。花粉症の人が、完全に花粉に反応しなくなることはないのと同様に。反応させないためには、その敵がいないところへ、逃げるしかない。

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