北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-5 世界が離れてゆく

こんなにも化学物質に満たされ、溢れ返っている世界の中で、その一つ一つに反応してしまうというこんな身体になってしまった私は、この先いったい、どうやって生きていったら、いいんですか…?

そんな想いが、頭と胸の中でぐるぐる駆け巡っていた。しかしそれは、一言も先生には言えないまま、この日の診察は終了した。

また着替えて、クリーンルームの外に出る。疲れ果てていた。「受診すれば何とかなる」、とどこかで期待していたぶん、落胆も大きかった。

しかし医師の先生とて、別に意地悪をして何も言わなかったわけではない。そのことはさすがに、私もわかっていた。

本当に、それ以外ないのだ。化学物質過敏症の〝治療〟というのは、結局のところ患者本人が、自分で自分の身の廻りの「環境整備」をするしかない。反応するものを極力遠ざけ、避けて生活するより他ない。その〝ケミカルフリー〟な生活を、ずっと続けてゆくことが、最大の治療法なのである。

逃げるしか、ないのか…

私の場合は。

重苦しい現実が、一気に身体にのしかかってきた。そんな気がした。診察代を支払う会計ロビーの人のごった返しが、何だか遠い世界の光景に見えた。この世界からどんどん、引き離されてゆく自分。でも、なら私は、いったい何処へ行けばいいんだろう… それでも、もう一回望みをかけ、2回目の診察予約はする。次の診察は、約1ヶ月後になった。

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