北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-24 杉並病の原因物質

イソシアネート類がアレルギーを起こさせるところは、ほぼ全身に及ぶといっていい。目や鼻の粘膜、皮膚、気管支といった外界と接するところから、肺、心臓、脳の中枢神経、血管といったより身体の内部まで。血管がアレルギー反応により、けいれんや収縮を起こしてしまい、それが心臓発作につながることもあるという。

津谷や星谷たちの症状を、今一度思い出してみよう。

喉の痛み、激しい咳、動悸、震え、顔の皮膚が真っ赤に腫れ上がる、歩行困難、頭がぼうっとなる、強い焦燥感に駆られる・・・

これら一見、バラバラに散発して起きているかに見える症状も、中心にトルエンジイソシアネートを据えれば、きれいにまとまるのである。 一貫しているといっていい。津谷と星谷が、杉並区井草の地を離れてもなお、イソシアネート類をはじめ各種化学物質に激しく反応し、ひどく苦しめられることとなったその理由も。

イソシアネート類が、原因だったのだ。少くとも原因の大部分を、この化学物質が担 っていた。「杉並病」で化学物質過敏症患者が多く出たのは、ある意味当然の結果だったともいえる。

やっぱり…

データ解析のグラフを見つめながら、津谷は思った。驚きはなかった。予想していた通りだった。というのも、海外文献を片っ端から調べていた過程で、イソシアネート類の存在が濃厚に浮かび上がっていたからだ。出るべくして出た、いや出ない方がおかしい、物質だった。

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