仕掛けられたうつ(chaptor1)

6-4 アパートでひとりもんモンもん

うつが始まったのは、かなり以前からだった。化学物質への過敏症状が出てくるより、数年早かったように思う。

始まったのは、学生の頃一人暮らしをしていた、例のあの世田谷アパートからだ。住み始めて2年目の、春、5月頃から。

今でもよく覚えているのは、その5月のゴールデンウィークのことだった。休みの間中私はずっと誰にも会わず、誰ともしゃべらず、外出もしなかった。ずっと一人でアパートに籠もり続けていたのだ。

なんでそうなるのか、自分でもよくわからない。何か特にきっかけがあったわけでもなかった。ただどうしてか、気分が重く、人に会いたくなく、しゃべりたくない。外出もしたくない。買い物にいくのすら嫌だった。スーパーやコンビニでレジの店員とお金の受け渡しをするのがもう嫌なのだ。その相手の視線や目線が、こっちまで突き刺さってくる気がする。それが嫌。嫌で、わずらわしくて、そして怖い。

逆にアパートに一人籠っていると、自分が無限に広がって自由になっていくような気がした。一人でいれば、何ものにも捕らわれず何ものにも汚されず、何ものにも傷付けられることがない。思う存分、心ゆくまで自分の内に浸っていられる。安心安全。そしてそうやって一人籠もっていればいるほど、何か自分の‘‘純度‘‘というようなものがどんどん上がってゆくように感じた。純度100%の自分になれるような。よりピュアでナチュラルな自分になっていけるような。

最初はだから、一人でも十分楽しかった。

苦痛感はまったくなかった。好きな時間に起きて好きな物を食べ、だらだらとテレビやレンタルしてきた映画なんか観る。眠くなったら寝る。何もかも敷きっぱなしの布団の上でやっているので、寝るのも苦しゅうない。ごろごろだらだら。ひたすらのんべんだらりだらだら。ある意味至福だ。

しかしそれでも、何でこうも人を避けたいと思うのかな?とはどこかで思っていた。コンビニの店員をどうしてそこまで、「怖い」と感じるのか。別にコンビニで店員から、傷付けられたことがあったわけでもないのに。

このときは、ゴールデンウィークが終わり授業が始まると、またすんなりと外へ出かけるようになった。「授業に出る」という目的が目の前にあれば、外に出るのもさほど抵抗感はないというのも不思議といえば不思議だった。

そして一歩外に出てしまうと、人に会うのもしゃべるのも、それほど苦痛ではない。気が付けばちゃんと、いつもの友人と会ってしゃべり、バカ笑いしてたりした。そしてそういうときはたいてい、自分がアパートに籠って一人モンモンと考えてたことなど、忘れてしまっている。あれ?

第6章をイッキ読み
第6章の全文掲載完了に伴い、日々のブログ記事を1ページにまとめたイッキ読みのページをご用意させていただきました。 長文となりますがご興味をいただけましたら、お読みいただけましたら幸いです。
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奥野井タリカ 私の化学物質過敏症(CS)

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