なぜその日に限って、ポストに入っていたその一枚のチラシを私は読んだのか。今もってよくわからない。
北里病院を受診する半年ほど前、横浜からM市にあるこの家に引っ越してきて、まだ間もない頃だった。
ポストに入っているそんなチラシは、普段ならば目も通さず、広告類とまとめて捨ててしまうはずだった。なのになぜか、ふと読んだ。
ピンク色をした、ザラ紙のチラシ。まるで昔のガリ版刷りのような、荒い印刷だった。そこにはこう書かれていた。
『〇△清掃局に排プラスチック圧縮処理施設建設の計画!! M市は今年度予算に計上
☆〇団地に「杉並病」発生の恐れ 団地住民で断固反対の声を上げましょう!!』
見た途端、文字通り凍り付いた。衝撃で頭が真っ白になり、何も考えられなくなった。
〇△清掃局とは、うちと目と鼻の先にあるあのごみ焼却施設のことだ。そこに排プラスチック圧縮処理施設をつくる? すでに予算も計上? ナンダ? コレハ??
慌てて私は、4階の我家までの階段を駆け上り始めた。足ががくがくしているのか、階段の一段一段を踏んでいる感覚がない。何だかふわふわしていた。
杉並病、杉並病…
「杉並病」という文字だけが、ぐるぐると頭の中を行き来している。
大変なことに、なった…
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