北里病院へ、行った話<奇妙な診察編>

5-31 いたちごっこ

 

手紙を、書いて出したのですが…

再受診の日、私はおずおずと先生にそう切り出した。

いえ、届いていませんが…

あ・・・そうですか…(がっくり)

仕方ないので、書いた内容を思い出しつつ、質問していった。先生がそれにまた一つ一つ答えてゆくという、前回とまったく同じパターン。

ごみ焼却場が近くにあるんですが…どうしたらいいんでしょう

うーん…でもまず、家の中、自室の環境整備ですね

でも、窓を開ければその空気が入ってきます

空気清浄器は使っていますか?

使ってます。でも全然、足りないというか…

フィルターを頻繁に変えたらどうですか

でも先生。入ってくるものが、家の中から排除出来るものより、遥かに多いんですよ。それってどうなんですか?

まあ…いたちごっこ、ではありますよね…

排プラ圧縮処理施設のことも話したが、答という答は何も見出せないまま、時間が来て診察は終了。そして先生はやんわりと、

ここは保険がきかなくて入室料も高価いですから、何かあったら今後は内科の方で…

と言った。

そうか…そうだよね。 私は思った。ここは、「診断」は出来るが、「治療」は出来ないところなのだ。 化学物質過敏症の根本的治療法はないのだから、それは当然だった。

わかりました。そうします

着替えて、またクリーンルームの外へ出る。においは未だ感じないが、何かもわっする、やや重たく感じる空気に身体がつつまれる。

ここにもう一度、来ることはあるのかないのか…なさそうだな…

そんなことを思いながらふと見ると、クリーンルーム入口脇の、スタッフルームみたいな部屋に、先生が出て来ていた。そして私が2日程前に出した手紙を、読んでいた。

コメント

 
タイトルとURLをコピーしました